Classiques japonais avec furigana
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みさごのすし
みさごの鮨
泉 鏡花
Lisez みさごの鮨 (みさごのすし) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 23 198 caractères · 47 écrans
――そうでなくて、いかに悲痛な折からでも、若い女が商いに出てまで、客の前で紙を絞るほど涙を流すのはちと情に過ぎる。大方は目の煩いだろう。
トラホームなぞだと困る、と、その涙をとにかく内側へ深く折込んだ、が。――やがて近江屋へ帰って、敷石を奥へ入ると、酒の空樽、漬もの桶などがはみ出した、物置の戸口に、石屋が居て、コトコトと石を切る音が、先刻期待した小鳥の骨を敲くのと同一であった。
「――涙もこれだ。」
と教授は思わず苦笑して、
「しかし、その方が僥倖だ。……」
今度は座敷に入って、まだ坐るか坐らないに、金屏風の上から、ひょいと顔が出て、「腹が空いたろがね。」と言うと、つかつかと、入って来たのが、ここに居るこの女中で。小脇に威勢よく引抱えた黒塗の飯櫃を、客の膝の前へストンと置くと、一歩すさったままで、突立って、熟と顔を瞰下すから、この時も吃驚した目を遣ると、両手を引込めた布子の袖を、上下に、ひょこひょことゆさぶりながら、「給仕をするかね、」と言ったのである。
教授はあきらめて落着いて、
「おいおいどうしてくれるんだ――給仕にも何にもまだ膳が来ないではないか。