Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

やぶからし

やぶからし

山本 周五郎

Lisez やぶからし de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 476 caractères · 44 écrans

Aozora Bunko

そのとき向うで叫び声が聞えた。

「すず――」とその声は叫んだ、「助けてくれ」

わたくしはよろめいた。男たちは勘ちがいをしたのだろう、両手をひろげて「だめだ」と云った。

「あんた方の見るものじゃあねえ、戻っておくんなさい」と男の一人が云った、「――わからねえんですか」

わたくしは向き直って、もと来たほうへふらふらと歩きだした。するとまた一と声、帛を裂くような声が聞えた。

「すず――」

わたくしはよろめき、道の脇へいって立ちすくんだ。そこは竹藪がかぶさっていて暗く、竹の枝に絡まった蔓草の先が、垂れかかってわたくしの顔に触った。

――野詰めにされる、命が危ない。

あれは本当だった、あの方の云ったことは事実だったのだ、そう思いながら、うるさく顔に触る蔓草を払いのけたが、ふとその蔓草を見て、突然なにかで突き刺されるような痛みを胸の奥に感じ、知らぬまにわたくしは泣きだしていた。禍いは去った、これですっかり終った、という安堵感と、あの方がいかにも哀れに思えたからである。

わたくしはそのやぶからしの蔓に、片手をそっと触れながら、涙が頬をながれるのも知らずにいた。