Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ゆだんたいてき
ゆだん大敵
山本 周五郎
Lisez ゆだん大敵 (ゆだんたいてき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 20 664 caractères · 41 écrans
権之助はつい近頃に前歯を一本欠いたので、激した叱咤につれてしきりに唾が飛ぶ、久之助はもう云い訳はやめて、
「まことに相済みませぬ」
と繰り返しあやまるだけに止めた。
夜の稽古を終ってからだった。
久之助はいちど寝所へはいったが、父の寝息を聞きすますと、足音を忍ばせてそっと住居をぬけだした。
戸外は新秋のすばらしい月夜で、街ぜんたいが水の中にでも沈んでいるようにみえる、かれはその白じらと青い光りを浴びながら、大手筋にある梶岡伊織の屋敷をおとずれた。
「かような時刻にご迷惑ですが、御滞在の淵田主税助どのにお取次ぎをねがいます」
門番にそう案内を乞うた。
「……今宵のうちにぜひ伺いたいことがあるからとお伝え下さい」
「その客はもうお立ちになりました」
門番は気のどくそうに答えた。
「……酔ってもいたのでしょう、なにか気にいらぬことがあるとみえ、お止め申すのをふり切って、つい半刻ほどまえにお立ちなされました」
「どの道をまいられたかわかるまいか」
「草生津の渡しを訊いておいでだったと思います」
「……それは残念な」
久之助は門番に聞えるように、
「では帰るとしよう」
と呟き、梶岡の門を離れると同時に急ぎだした。