Classiques japonais avec furigana
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わがまち
わが町
織田 作之助
Lisez わが町 (わがまち) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 93 840 caractères · 186 écrans
他吉は国際情勢が自分のマニラ行きを許さぬと判ってから、大きな声も出せぬくらい腑抜けていた。ひとつには、君枝をかたづけたという安心からであった。他吉の眼からは、次郎は働き者で、申し分ない婿に見えていたのだった。
ところが、次郎が鶴富組の主人の依頼を断ったことを聴きつけると、他吉は二十も若がえった。
他吉は血相かえて次郎の家へ飛んで来て、
「潜水夫が嫌になったとは、何ちゅう情けない奴ちゃ。鶴富組の御主人も言うたはったが、今に日本がアメリカやイギリスと戦(や)ってみイ。敵の沈没船を引揚げるのに、お前らの身体はなんぼあっても足らへんネやぞ。五十尋たらの海が怖うてどないする? ベンゲットでわいが毎日どんな危い目エに会うてたか、いっぺん良う考えてみイ。お父つぁん生きてたら、蝙蝠傘でど頭(たま)はり飛ばされるとこやぞ」
と、呶鳴りつけ、
「――わいらのことは心配すんな。お前にもしものことがあっても、君枝はわいが引き受けた。わいが死んだあとは、君枝が立派に後家を守って行く。そういう風にわいは君枝を育てて来たアる筈や。心配はいらんぜ。お前がそういう心配をしたら、どんならんと思えばこそ、わいはお前らの厄介にならんと、ひとりでやって行こ思て……」