Classiques japonais avec furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lisez アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) de 渡辺 温 (わたなべおん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 168 caractères · 267 écrans
それよりも、むしろ幸子の夫である僕が、彼の犯罪を悉く知っているばかりでなく、彼が不覚にも成し遂げなかった目的を、代って果してやったと、打ち明けた方が、余程効果のある趣向ではないだろうか……」
旻は低い呻き声をあげた。
――兄さん、幸子さんは、ただお芝居をしただけなんだ。幸子さんは兄さんだけを、真実愛していたんだ。それを兄さんは知りもしないで……」旻は激しく咳入った。そして白い枕の上に真赤な血を吐いた。
――旻、僕の云い度いと思ったのは、併しそんな意味のことではないのだ。ねえ旻や……」晃一は弟の背中を、そう云いながら、やさしく撫でてやった。
7
それから、一週間程経って旻は死んだ。晃一は、その忌しい別荘にいることが堪えられなくなって、都へ引き上げることにした。それで晃一は、いろいろの道具の整理をした。すると旻の生前使っていた書物机の中から、一通の粗末なハトロン紙の封筒に入った手紙のようなものが出て来た。
上書に、兄上様――旻。傍に「秘」としてあった。晃一は、それを片手にしてしばらく思いためらった。晃一はその儘火にくべてしまおうかと考えた。が結局、思い切って封を切った。