Classiques japonais avec furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lisez アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) de 渡辺 温 (わたなべおん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 168 caractères · 267 écrans
僕は兄さんの居ない世界で、幸子さんと二人で暮せるかと思うとこの上もなく幸せです。
晃一は、マッチを摺って、その手紙に火を点じた。
――なる程。旻は、そんなに迄、幸子を自分のものにして置きたかったのか。旻から幸子を取り返したことは、くれぐれも自分のあやまりだった。
晃一は、縁側へ出ると、誰もいない海の景色を見つめたまま長いこと考え込んだ。それから海に向って呼びかけた。
――けれども旻や、僕は、あの時の光景をはじめから見て知っているのだ。恥しいことだが、お前たちのあとをつけて行って、窺っていた僕は、すぐ傍の木影からすっかり見てしまったのだ。幸子はお前に追いつめられて断崖の縁迄出たのだが、そこでなおも執拗に追い迫るお前を避けようとしたはずみに、足を踏みすべらして、墜落したのだ。お前は驚きのあまり幸子の安否を見届けることもしないで、逃げ帰ったではないか。幸子は、あの崖の途中の突端にほんのちよっと袖を引っかけただけで、真直ぐに落ち込んでしまったのだ。お前が、彼女を殺さなかったと同様に、僕も決して彼女を殺しはしなかった。だが、とにかくこの勝負はどうやらお前の勝らしいね。