Classiques japonais avec furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lisez アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) de 渡辺 温 (わたなべおん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 168 caractères · 267 écrans
――あなたさま、お知り合いでいらっしゃいますか?」
――そう、まあ知り合いですね。……江戸川の立派なお邸のお嬢さんだよ、お父さんは男爵でね。電話をかけましょう。――君は不良少女なぞと云ったことを、勿論みんなの前でお詫びする気でしょうね。」
井深君は、この少女の身元を証明するために本物の恋人の兄のところへ電話をかけよう、そしてあとで訳を云ってあやまればいいと思ったのである。井深君はこの思いつきに嬉しくなって水兵服の少女の方をみた。しかし、少女は井深君と顔を合せることを恐れでもしているように、部屋の隅っこの方へ体を向けて顔をふせていた。
――モシモシ、園田男爵ですか、園田君いますか、こちら井深です。ええ井深。……ああ園田君、今ね、赤坂見附で妹さんと――ああちえ子さんとお会いしたんだがね。これからすぐ送って帰るよ。さよなら、くわしい事はあとで話すよ、さよなら……」と井深君は相手の声が何を云おうとお構いなしに、大きな声でおっかぶせるようにそれだけしゃべってすぐ電話を切った。
果して、その電話のおかげで、主人や女給はひどく申訳のないような顔をしてひたあやまりに、井深君と水兵服の少女とにあやまるし、入口に立っていた野次馬もこそこそとそれぞれ散らばってしまった。