Classiques japonais avec furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lisez アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) de 渡辺 温 (わたなべおん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 168 caractères · 267 écrans
はあはあ、南京鼠の改良種をね。まあ、左様でございますか。え? ちょっと、お待ち下さいませ。』
エミ子は、電話口を手で蓋して、如何にも吃驚したような顔で文太郎君に詰問しました。
『文ちゃん。今日お休みだっていうじゃありませんか? どうしたって云うこと? あなた知らなかったの?』
『そ、そんな馬鹿な!』あらためて、正しく左の靴を穿き終った文太郎君は、些か面喰った様子ではげしく首をふりました。『とんでもない、何もかも、みんな四月馬鹿だ!』
『だって、山崎さんたら、今日、文ちゃんと南京鼠の競進会を見に行く筈だったって、そう云ってるの……』
『な、な、何が、南京鼠だい! もう沢山だ。四月馬鹿、四月馬鹿!』文太郎君は、ステッキを引つかむと、身をひるがえすように外へ飛び出して行きました。
『待ってよ。文ちゃん! 文ちゃん! お待ちなさいってば!……』エミ子は周章てて、受話器をかけて、門口迄追いかけたのですが、文太郎君は一散走りに通りへ曲って行ってしまいました。
富士山が見える媾曳
エミ子は不安な予感にかられました。そう云えば、今日から新しく春外套に着かえたし――四月になって冬外套も着ていられまいと云えばそれ迄だけれども、併し何時だって、抱えて出る筈の折鞄も、今日に限って置いて行ったし、こんなに早過ぎることを承知で周章てくさって