Classiques japonais avec furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lisez アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) de 渡辺 温 (わたなべおん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 168 caractères · 267 écrans
久しいことこの習慣が根気よく保たれた。
雨降りの休み日が二十一度、その中六度は外套を透して、長靴の中へ流れ込む程の豪雨であった。そんな時には、無論窓にいかめしい目かくしが下りていた。
霧のために窓の灯が見別け難かったことが十三度。
風のあまり吹かない地方なのだが、それでも池の水が波立って、四辺の景色を映さなかった日が一ダース。
散歩季節の夕月の美しい時分には、沢山の散歩者から自分をあきらかにするために、ハーモニカで時花節などを奏した。(ハーモニカにかけては、Y君は隊内随一の名手であった)
愛情の故には、どんな大胆な振舞いに出ようと、たとえ恋人の家の扉の前に寝ようと、恥にもならぬし、また咎められるようなこともない。すべて恋をする者の行為には、一種優美な趣が加っているものである。――Y君もまたプラトオンの「饗宴」を愛読した折があって、パウサニアスの愛の論議に信頼していたので、容易に勇気を挫かなかった。
ただ雨よりも霧よりも一番Y君を閉口させたのは、例の夜の女の群れであった。殆んど天上なるものへの思慕の如く一途に汚れなきこの恋の精進を、みにくい悪魔の誘惑に邪げられることが堪えられなかった。