Classiques japonais avec furigana
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カインのまつえい
カインの末裔 クララの出家
有島 武郎
Lisez カインの末裔 クララの出家 (カインのまつえい) de 有島 武郎 (ありしまたけお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 45 864 caractères · 93 écrans
クララの顔はほてって輝いた。聖像の前に最後の祈を捧げると、いそいそとして立上った。そして鏡を手に取って近々と自分の顔を写して見た。それが自分の肉との最後の別れだった。彼女の眼にはアグネスの寝顔が吸付くように可憐に映った。クララは静かに寝床に近よって、自分の臥ていた跡に堂母から持帰った月桂樹の枝を敷いて、その上に聖像を置き、そのまわりを花で飾った。そしてもう一度聖像に祈祷を捧げた。
「御心ならば、主よ、アグネスをも召し給え」
クララは軽くアグネスの額に接吻した。もう思い残す事はなかった。
ためらう事なくクララは部屋を出て、父母の寝室の前の板床に熱い接吻を残すと、戸を開けてバルコンに出た。手欄から下をすかして見ると、暗の中に二人の人影が見えた。「アーメン」という重い声が下から響いた。クララも「アーメン」といって応じながら用意した綱で道路に降り立った。
空も路も暗かった。三人はポルタ・ヌオバの門番に賂して易々と門を出た。門を出るとウムブリヤの平野は真暗に遠く広く眼の前に展け亘った。モンテ・ファルコの山は平野から暗い空に崛起しておごそかにこっちを見つめていた。