Classiques japonais avec furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lisez キャラコさん de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 21 236 caractères · 43 écrans
そんなわけだから、当分お前はお前でないことにして置きなさい。
長六閣下は、あの四千万円を、日本のためになるようにお前に使わせたいといっている。最も意義あるようにあの金を使うために、すこし世間を見て置くのもいいだろう。旅行をするなり、働くなり、この機会を利用してできるだけいろいろ経験をつみなさい。閣下も希望している。
つまらぬ財産をもらったばかりに、こんなよけいな苦労をしなくてはならぬことは、さてさてお前もふびんなやつだ。
秋作
キャラコさんのほうは、財産を相続したことなどは、すっかり忘れていたといっても決して嘘にはならない。人形でももらうほどに気軽にもらってしまったが、それもなにか他人のことのようで、自分が使うのだなどとは、今日まで、ただの一度も考えたことはなかった。
ところで、この手紙を読むと、四千万円という金が、とつぜん、ひどい重みで自分の肩にのしかかってくるような気がする。
あたしがあの四千万円を使う? 考えただけでも気が重くなる。なにしろ、キャラコさんは、いままで自分の手から二円以上の金を使ったことがないのに、それが、四千万円ということになると途方に暮れるほかはない。