Classiques japonais avec furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lisez キャラコさん de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 122 caractères · 29 écrans
……あの英吉利人のやつ、たしかに、あたしたちを馬鹿にしているんだ」
黙って水浴着の裾を引っぱっていた芳衛さんが、すこし皮肉な調子でいった。
「ほんとうに、(リットル)ではいけないわねえ。……でも、お見受けするところ、どなたも、(グレート)とはいえないようだわ」
このひと言のために、筏の上は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
「芳べえのばかやろ。国民精神が稀薄だぞ!」
「ひとの真面目な議論をまぜ返すのはよくないです」
芳衛さんは、みなにやり込められて黙ってしまった。
一人前の淑女たちを『リットル・ウィメン』などと呼んだ仕返しに、ワイズミュラー君のことを『ローリーさん』と呼ぶことにした。小説では、『四人姉妹』の隣りに住んでいる、ローレンス家のちっちゃな坊やの名前である。
二
いっぱいに開け放した硝子扉から、薄荷入りの、清すがしい朝の海風が吹き込んでくる。
白い紗の窓掛けを蝶のようにひらひらさせ、花瓶のダリヤの花をひとゆすり、帆前船の油絵の額をちょっとガタつかせ、妖精が戯れてでもいるように大はしゃぎで部屋の中をひと廻りすると、反対の窓からスット抜けて行ってしまう。