Classiques japonais avec furigana
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ドーヴィルものがたり
ドーヴィル物語
岡本 かの子
Lisez ドーヴィル物語 (ドーヴィルものがたり) de 岡本 かの子 (おかもとかのこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 21 723 caractères · 44 écrans
女の言葉には妙に性根があった。
――君は、どうしてそれを知ってるの。
――蛇の道ゃへびさ、ふん。
女は横を向いてせせら笑ったが、今度は前より一層酷く小田島を睨み上げた。
――わたしゃ、いつだってあのイベットに男を取られちまうんだよ。
女の睨みが緩んで来ると惨なベソの様な表情が現れて来た。小田島は前からイベットと知り合いだとこの女に云った処で仕方もなしきりが無いので嫌がる女を引きたててホテルの玄関から夕暗のなかに出して遣った。
五
午前一時過ぎのドーヴィル賭博場内だ。
牛乳色に澱んだ室内の空気のなかで、深酷な血の吸い合いが初まっていた。
煙草のけむりと、香水の匂いとで疲れて居る光の中に、賭博台が幾つも漂って居る。それにぎっしり人がたかって居る。難破したボートに人がたかって居るように見える。あまりに縁へのしかかり、沈んで仕舞った様にも見える人がある。
二千フランのテーブルでは大賭博団スタンレー一派が戦を開いて居る。
細くてキチンと服装を整えた男、背中を丸出しの女、二人とも揃って肥った体に宝石を鏤めて居る夫婦。
――あまり綺羅びやかに最上級に洒落て居るので却って平凡に見える幾十組かが場の大部分を占めて居るので、慾一方にかかって居る樺色の老婆や、子供顔のうぶな青年が却って目立つ。