Classiques japonais avec furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lisez ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 682 caractères · 27 écrans
見あげると、岩頭に吹きつけられた大きな雪塊が、いまにも雪崩れ落ちて来るかと思われ、うつむけば断崖の下には氷の砕片が鋭い鮫の歯を並べている。コン吉は目玉をすえ、口で息をしながら、はや一切夢中でにじりあがる。タヌはと見れば、これも先ほどの威勢もどこへやら、これ一本が命の綱、と釣られた鮒のようにあがって来る。
一つ登れば、そのまま次に玻璃を張ったような蒼い氷の壁が現われる。八寒地獄の散歩道もかくやと思われるばかり。
焦慮瘠身幾時間ののち、やがて、ミューレの平場へ届こうとするころ『グーテの円蓋』の頂きに、ふと一抹の雪煙りが現われた。驚きあわてたガイヤアルが、その凶徴を指さしながら、
「フ、フ、フ、フ……」と披露する間もあらせず、細かい吹雪まじりの突風が横なぐりに吹きつけ始めた。たちまち四辺は瞑々たる白色の中に沈み、いまにも天外に吹き飛ばされようと思うばかりに、その風のすさまじさ劇しさ、コン吉は凍える指に力を集め、必死と岩にしがみつき、
「オーイ、オーイ」と呼びかけると、はるか上の方からは途切れ途切れにガイヤアルの血声。
「モ、モ、モシ、……下ノ方。……オ助ケ下サアイ。