Classiques japonais avec furigana
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パリのさんさく
パリの散策
辰野 隆
Lisez パリの散策 (パリのさんさく) de 辰野 隆 (たつのゆたか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 165 caractères · 5 écrans
僕は嘗てベルリンで、そういうぎごち無さを体験した。ベルリンには、一体に、パリに負けるものか、ロンドンに負けるものか、と反抗的プロシア精神が漲っていて、客を慰和する趣きが著しく欠けている。ローマという都が、やっぱり、ひどく力んだところがあって優雅な趣きがない。
総じて、勃興の途を歩む国の都は何処となく浅薄な凄じさがあって、人を落ちつかせない。寧ろ、文化が一定の限度に達してしまって、既に頽廃期に入った国の都の方が如何にもしっとりとして懐しくもある。だから、僕等はニューヨークの殷賑を想像しながら無数の摩天閣の聳ゆる市街を眺めても、近代主義の墓地のようで、石塔や塔婆の林立する墓所を観ているようにも思えるのである。寧ろ、ほんものの墓地の方が遥かに審美的には活きていて、ニューヨークの方が死んでいる。
パリのパンテオンの裏の方にコントル・スカルプという汚らしい辻がある。辻の中央には共同便所があり、一軒の珈琲店があるきりで、周囲の細民の家屋で取りまかれている。夏などはこの狭い辻が小便臭くて、ひどく不潔な感じがするが、それでいて、やっぱり絵になる辻なのだ。夕方、下宿に帰る途すがらこの辻を横ぎると、少し傾きかけた、古く黒ずんだ壁面に赤い斜陽がさして、何とも言えない色彩を染め出している。