Classiques japonais avec furigana
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プウルのかたわらで
プウルの傍で
Lisez プウルの傍で (プウルのかたわらで) de Nakajima Atsushi (中島 敦) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 16 843 caractères · 34 écrans
やっと上りきった時、右の手が滑って、たたきの角で一寸肱の所を擦りむいてしまった。はじめは一寸白くなった皮膚のおもてが、次第に桃色を帯びてきて、到頭プツリと真赤な血の粒が一点から盛上ると、見る見るそれが大きくなり、やがて糸をひいて、ぽとりと土の上に垂れるのであった。彼は他人事のように綺麗だなと思った。
乾いた手拭で身体をふきながら、彼は、すぐ眼の前の、梨の木の枝に、鵲が一羽止って、こちらを見ているのに気がついた。嘴の黒い、胸の白い、両翼の紫色をした朝鮮鴉であった。内地にいて、久しく此の鳥を見なかった彼には、全く何年ぶりかであった。三造は手拭をふって追う真似をして見た、が、仲々逃げなかった。彼は、そろそろ、その梨の木の方へ歩いて行った。三造がその木から二間ばかりの所へ来たとき、鵲は短い濁った鳴声を残して、飛立ってしまった。
その最初の冒険が(或いは冒険未遂が)どうして洩れたものか、三造には分らなかった。三日ばかり経った日の昼休みに、二人の五年生が三造を無理に裏山につれて行った。二人とも比較的硬派で、正義派と見なされている生徒等であった。彼等はいずれも身体が大きく、腕力が強かった。