Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ヘヤーピンいっぽん

ヘヤーピン一本

豊島 与志雄

Lisez ヘヤーピン一本 (ヘヤーピンいっぽん) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 246 caractères · 17 écrans

Aozora Bunko

「や。どうも、ありがとう。」

礼を言ったのは俺で、女中がヘヤーピンを黙って受取り、針金を二つに折り曲げたようなそれを、まっすぐ一本に延ばしてくれた。

「貰っておきますよ。」と俺は言った。

室の中からは何の返事もなく、奥の方に話し声があるきりだった。

俺は自分の室に戻り、パイプを通して、煙草をふかした。そしてヘヤーピンは、紙にくるんで、胴衣のポケットにしまった。

ただそれだけのことで、俺は別に気に留めはしなかったのだが……。

あとがいけない。

そもそも、俺が旅行の途次、山陽線のO駅に急行列車からわざわざ降りたのは、岩木周作を訪問するためだった。彼とはもう十年ほど逢わないが、時折交わす書信の調子は昔通りだ。俺は旅先から、ちょっと立ち寄るかも知れないとだけ知らせておいた。はっきりした予定がつかなかったのだ。

列車の都合で、O駅に降りたのが午前四時半。岩木の家までは可なり遠いことが分っていたし、細君がなんだか病身らしい様子だし、訪問に適当な時間になるまで駅内で過すつもりでいた。ところが、十一月末のこととて、午前四時半はまだ深夜で、薄着の身はぞくぞくと冷えこむ。