Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
Lisez ヰタ・セクスアリス (ウィタ・セクスアリス) de Mori Ōgai (森 鴎外) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 58 941 caractères · 119 écrans
この古道具屋はいつも障子が半分締めてある。その障子の片隅に長方形の紙が貼ってあって、看板かきの書くような字で「秋貞」と書いてある。小菅へ行く度に、往にも反にも僕はこの障子の前を通るのを楽にしていた。そしてこの障子の口に娘が立っていると、僕は一週間の間何となく満足している。娘がいないと、僕は一週間の間何となく物足らない感じをしている。
この娘はそれ程稀な美人というのではないかも知れない。只薄紅の顔がつやつやと露が垂るようで、ぱっちりした目に形容の出来ない愛敬がある。洗髪を島田に結っていて、赤い物なぞは掛けない。夏は派手な浴衣を着ている。冬は半衿の掛かった銘撰か何かを着ている。いつも新しい前掛をしているのである。
僕はこの頃から、ずっと後に大学を卒業するまで、いや、そうではない、それから二年目に洋行するまで、この娘を僕の美しい夢の主人公にしていたに相違ない。春のなまめかしい自然でも、秋の物寂しい自然でも、僕の情緒を動かすことがあると、ふいと秋貞という名が唇に上る。実に馬鹿らしい訣である。何故というのに、秋貞というのはその店に折々見える、紺の前掛をした、痩せこけた爺さんの屋号と名前の頭字とに過ぎないのである。