Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる

一九三二年の春

宮本 百合子

Lisez 一九三二年の春 (せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 21 942 caractères · 44 écrans

Aozora Bunko

四月三日の晩、小林多喜二が来た。そして、中野重治が戸塚署へ連行されたことを話した。作家同盟の事務所できいて来たのだそうだ。

「原泉子は知っているだろうか?」

とわたしがきいた。中野の妻は左翼劇場の女優として働いているのである。

「さあ、どうだろ、まだ知らないんでないか」

小林が特徴のある目つきと言葉つきとで云った。

「電話をかけてやるといいな」

わたしは駒込病院前の、背後から店々の灯かげをうける自働電話で築地小劇場を呼んだ。原泉子はすぐ電話口へ出てきた。てきぱきとした調子で、

「知ってます。××さんの細君が知らしに来てくれた」

と云った。

「今夜、あたし十一時すぎでなくちゃ帰れないんです」

何のために、どの位の予定で中野重治が引致されたのか、それは原泉子にも不明であるらしかった。わたしは電話をきり、動坂の中途で紙袋に入れた飴玉とバットを買って戻った。小林多喜二は元気にしゃべって十時すぎ帰りがけに、玄関の格子の外へ立ったまま、内から彼を見送っているわれわれに向い、

「どうだね、こんな風は」

と、ちょっと肱を張るようなかっこうをして見せた。彼は中折帽子をかぶり、小柄な着流しで、風呂敷包みを下げている。