Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ぼしぞう
久生十蘭短篇選
久生 十蘭
Lisez 久生十蘭短篇選 (ぼしぞう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 48 344 caractères · 96 écrans
子供が大きくなれば母親なんかいらなくなる。それはあたりまえのことなんで、婆ァうるさい、日本へ帰れってアパートから追いだされてしまったけど、うるさがらせに行ったあたしのほうが悪いんだから、文句をいうセキなんかありはしない。でも当座は悲しいもんだから、マルセーユまで泣きづめに泣いていたわ。フランス人に見られるといやだから、廊下へ出て泣いたり、はばかりへ入って泣いたり」
そういうとクスクスと笑いだした。
親馬鹿もここまでくれば行きとまりだと、滋子はなにをいう気もなくなって、
「そんな目にあって笑っていれば世話はないのよ」
「だって、おかしいじゃないの。あたしは汽車の西洋便器の蔽い蓋の上へ腰をかけて手ばなしで泣いていたのよ。その恰好を思いだすと笑わずにはいられないわ」
「まあまあ、たんととぼけていらっしゃい。あなたもおっしゃるからあたしもいいますけど、ほんとうにあの時ぐらい困ったことなかったわ。朝になっても伊作は帰ってこないし、あなたは竺仙の黒紋付かなんか着てチンと坐ってるでしょう。巴里にはお元日なんかないったって、そうかとすぐ話のわかるひとじゃなし、大急ぎでマドレーヌのエデアールへ駈けつけると、錨の印のついたふしぎな正宗なんですが、情けないことにはたった一本だけなの。