Classiques japonais avec furigana
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のりあいじどうしゃ
乗合自動車
川田 功
Lisez 乗合自動車 (のりあいじどうしゃ) de 川田 功 (かわだいさお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 3 957 caractères · 8 écrans
定食を一つ願います」
女給はもう一度笑った。
「今日は大層温順しいのねえ」
「何時だって温順しいじゃないか」
彼は同じ食卓に就いて居る一人の年増の貴婦人を凝乎と瞶めて居た。美人であるから許りではない。彼は婦人が一人でこんな所へ来て、驕慢らしく食事などして居るのを妙に憎らしく思う性分なのである。
「随分暫くねえ、何処で浮気して居たの?」
先刻の女給が洋食の皿を並べ乍らそっとこんな事を云った。と、前に居た貴婦人が故意と大きく咳をした。彼の眼と女給の眼とが期せずしてぶつかった。「妬いてるんだわ」と、云って居る女給の眼であった。
一時間近く経って後、彼は再び人混の中を分けて煙草の煙と共に漂って居た。露店が尽きて橋へ来た。彼は惰性で橋を渡って了った。芝口へ来ると急に淋しい様な気がして乗合自動車へ飛乗って逆戻りを始めた。満員で混み合う中へ来ると彼の職業意識は急に働き始めて居た。
尾張町へ来ると客は殆んど入れ交った。が、乗って来る客の半分は依然買物に来た婦人達であった。其中に彼は先刻資生堂で卓を同じくした婦人を見付出した。更に驚いたのは、資生堂から別れて居た箕島刑事が、慌ただしく発車前に乗込んで来た事であった。