Classiques japonais avec furigana
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のりあいじどうしゃ
乗合自動車
川田 功
Lisez 乗合自動車 (のりあいじどうしゃ) de 川田 功 (かわだいさお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 3 957 caractères · 8 écrans
彼はけちの附いた此車を見捨てる事に決心した。
が、世の中の出来事は兎角志とはちぐはぐになって食違いたがるものであった。室町の停留場は直ぐに近付いた。今度降りる客が大分居るらしく、座席を立ちかける人も居るし、出口の方へ押し掛って行く者も居た。こうしてお互の関係位置は漸次に移動した。彼も出口へと急いで居る人の一人であった。
と、猫の鼻先へ鰹節でもぶら下げた様に、何の期待もなかった彼の前へ一人の紳士が現われた。中年の男で相当整った身なりを見せて居た。併も外套と上着の釦が総て外れた儘で居た。其上に金時計がチョッキのポケットからだらりッと下って鎖の下に垂れて居た。内隠しを見ると紙入らしいものが忍んで居て相当のふくらみを見せて居た。彼はこれ丈け見ても此男が気ぜわしい男であり、懐中物を抜取るには恰好の客である事を見て取った。而してこんなだらけた風になったのも、恐らく朝鮮人の掏摸が此処までやったもので、何かの機会で遣り損じたものとしか想像は出来なかった。全く、彼に取っては色々の意味で好都合な出来事であるに相違なかった。
車は木片と木片とを歯の浮く様に軋らして、軈て残りの動揺と共に停留場の標示板の前へ無雑作な停り方をした。