Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ここのつのかぎ

九つの鍵

野村 胡堂

Lisez 九つの鍵 (ここのつのかぎ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 21 349 caractères · 42 écrans

Aozora Bunko

清潔ではあるにしても、見る影もない質素なようすをした幸子が、飛びついて三郎の胸に顔を埋めようとして、ハッと気がついて飛び退いたのは、さすがに娘らしいたしなみでした。

見ると、姉弟の住み馴れた焼けトタンの家は、多勢の人足の手でめちゃめちゃに打ちこわされ、材料は焼跡に積み重ね、姉弟の持っているささやかな家財は、その側に屑物のようにほうり出されるのです。

「畜生、何んてことをしやがるんだ」

弟の馬吉は、小さい拳骨を振り廻して精一杯の反抗心を示しますが、十四才のみの虫少年が、十人あまりの荒くれ男に対して、どうすることもできません。

「これは一体どうしたことなのです、幸子さん?」三郎は思わず娘の肩に手をおきました。理智的で清潔な感じのする幸子が、恥も外聞も忘れて、ヒタ泣きに泣くのはよくよくのことでしょう。

「一年前から立退きを迫られていたんです――このビルディングの持主の小早川武丸という人から」「で?」

「でも、私と弟は、どんな事があってもここから動くまいと決心をしておりました。つまらない剛情からではありません。この山の手ビルは、戦争の前まで私の父のものだったんです」