Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

Lisez 二つの途 (ふたつのみち) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 102 caractères · 104 écrans

Aozora Bunko

痰が二つ浮いてるきりだった。彼女は一寸病人の顔色を窺って、それから素直に、痰吐を持って室を出て行った。

看護婦の戻って来るのが、啓介には大変長く思われた。彼は苛ら立ちながら待っていた。何の音もしなかった。病室の中が妙に明るくなって、その中に閉じ込められた自分の姿がまざまざと見出された。病室の外は広茫とした薄闇だった。薄闇の中に何かの影が次第に見えて来た。信子が居るようだった。木下が居るようだった。看護婦と婆やとが居るようだった。

後はそっと蒲団の外に身体をずらし初めた。腰から下が石のように重かった。漸く足先が畳に触れると俄に力が出てきた。両手で蒲団をはねのけ、床柱につかまって立ち上ろうとした。手足ががくりと撓んで其処に倒れてしまった。そしてそのまま、畳の上を徐々に匐い出した。眼の奥が暗くなってきた……。

看護婦が戻って来ると、蒲団の外にぬけ出して長く身を横たえてる啓介の姿を見出した。彼女は叫び声を上げた。信子が馳けつけて来た。執拗に眼を閉じている彼を、再び寝床に連れ戻さなければならなかった。

木下がやって来ると、彼は静に眼を開いた。

「どうしたのだ?」