Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ふたつのみち
二つの途
豊島 与志雄
Lisez 二つの途 (ふたつのみち) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 102 caractères · 104 écrans
以前愛のうちに自分と一つに溶け合った彼女、自分の一部であった彼女、――今自分の手を握りながら石のように固くなってる彼女。彼は、彼女が恐れているのを見た、恐れて看護婦を呼び起したく思いながら、敢てなし得ないでいるのを見た。彼は苛ら立ってきた。彼女が恐れて震えているのが感じられた。……そしてそのまま彼は手を任せ彼女はその手を握っていた。
夜が明けて、信子が一寸室から出て行った時、啓介は起き上ろうとした。高子がそれを引止めた。木下がやって来た。啓介は耻しくなった。おとなしく頭を枕につけて、眼をつぶった。すると凡てが、何とも知れない凡てが、行きづまってしまった。行きづまった心で彼は、薬を飲んだ、重湯と牛乳とを飲んだ、注射を受けた。ただ一つの場合が、死という一つの場合が、あるがままの現在のうちに口を開いていた。彼はその場合のことに考えを集めた。
生きるということは問題ではなかった。毎日同じような昼と夜、日々の区別さえもつかない一様な時の連続、張りきった限定された明るみ、――病室の空気のみが彼を囚えていた。それが彼にとっては生であった。それは「凡ての場合」であった。