Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

Lisez 二つの途 (ふたつのみち) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 102 caractères · 104 écrans

Aozora Bunko

木下は妙にかしこまって坐った。

「どうかしたのか。」と暫くして木下は尋ねた。

啓介はあたりを見廻した。

「いや、君に話したいことがあったが、後でもいい。」

「そんなら今云ってくれ給い。どんなことでも構わない。今丁度いいから。」

木下の方が妙に急き込んでいた。彼は身を乗り出して、啓介の顔を覗き込んだ。

風につれて遠く汽笛の音が響いてきた。啓介は俄に眼を見据えた。

「木下!」と彼は云った。それから室の中にぐるりと視線を動かした。「尾野さん、一寸外の室に行っててくれませんか。」

「じゃあ僕の室に行ってて下さい。」と木下は云った。

看護婦が室から出て行くと、啓介は俄に荒々しい様子に変った。落ち凹んだ眼が上目勝ちに据っていた。呼吸の度に小鼻が脹れ上っていた。頬がこけて妙に大きく見える頤には、粗らな髯がかさかさに乾いていた。

「僕は死ぬかも知れない。」と彼は云った。調子は落付いていたが、或る圧倒し来る力に押し出されるような響きがこもっていた。彼はくり返した。「僕は死ぬかも知れない。それで、その場合のために用意をしておくのはいいことだと思う。」

木下も信子も、何とも答えかねた。