Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

Lisez 二つの途 (ふたつのみち) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 102 caractères · 104 écrans

Aozora Bunko

「痙攣はもう来ますまいが、余り精神に激動を与えて、ひどい脳症でも起されると困りますからね。」

「あれで、病気が癒っても精神が変になることはありますまいか。」

「なあに、それほど心配するには及びません。」

木下は涙ぐんでいた。彼は、落付いた親切な医学士を、しみじみと感謝の念で見上げた。本田は立ち上った。室の中に懸っている絵を一巡見廻わした。それから、黙って出て行った。木下は急に深い淋しさに襲われた。無関心に眺められた自分の製作を、彼はじっと見やった。室の隅に裏返しに立てかけてある画面が眼にはいった。赤く塗りつぶした樫の絵だった。彼は云い知れぬ衝動を受けた。いきなりカンヴァスを取り外して、ずたずたに引き裂いた。

彼は狼狽してる自分を見出した。じっとして居れなかった。画室から飛び出してすぐ病室に行った。信子と看護婦とが、同時に彼の顔を見上げた。彼は荒々しい顔付で、啓介の上に身を屈めた。

「お母さんを呼んできてあげるから、待っていてくれ給え。大丈夫だ。医者は君の容態は心配ないと云っていた。」

啓介は眼付でうなずいた。

木下はすぐに外出の用意をした。先ず丸の内の会社に、啓介の叔父の河村氏を訪ねた。