Classiques japonais avec furigana
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にんじんのせい
人蔘の精
田中 貢太郎
Lisez 人蔘の精 (にんじんのせい) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 3 205 caractères · 7 écrans
洞穴の口には月の光が射しておりました。怪物は其の中へ入って大きな石が寝台のようになっておるところへ往って其の上に張をおろしました。張は怖る怖る眼を開けて穴の中を見ました。傍にたくさんの獣の骨や頭の類がころがっていて、其処から生臭い鬼魅悪い臭がして来ます。張はそれを見ますと、己も今にあんなにして啖われるのだと思いましてがたがた顫えておりました。
怪物は其の時、張のそばから離れて獣の骨のある処へ往っておりましたが、やがて手に何か持って来ました。それは生の肉のきれでありました。怪物は其の肉のきれを張の前に置いて、それを啖えというように、其の肉の上にやった手を己の口のそばへ持って往きました。張は其の意味が判りました。張はすぐ己を殺す考えはないらしいと思ってすこしは安心しました。しかし、生臭い生の肉を口に入れる気はいたしません。張は困りました。怪物は張が判らんと思ったのか、二度も三度も続けてものを啖う真似をいたしました。張はしかたなしにうつむいておりました。
此の容を見て怪物は考え込みました。そしてしばらく考えて後にのっそりと穴の口へ出て往きましたが、穴の口にしゃがんでかちかちと石を打ち合す音をさせました。