Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
にんげんせいぞう
人間製造
国枝 史郎
Lisez 人間製造 (にんげんせいぞう) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 606 caractères · 22 écrans
彼の歩いて行く往来の右手に、運河と云ってもよいほどの大阪特有の堀割があって、対岸の大きな建物から、水面へ落す燈火の光が、虹のように美しく見えていたが、勿論飢えたる労働者には、綺麗だとも素晴らしいとも思われなかった。
三町あまりも歩いた時、堀割を越して向うへ行ける長い橋があったけれど、彼は渡ろうともしなかった。併し其辺は海の入口かして、プンと潮臭い生暖い風が、彼の鼻の辺を吹き過ぎたので、鳥渡ばかり小鼻を蠢かした。
「一体ここは何処なんだろう?……俺に執っちゃあ大阪は今度が初のお目見得なんだからな。何が何処にあるんだか解りァしねえ……、ああ本当に厭だ厭だ! 様子の知れねえ町の真中を、宿も取れずこんな夜中に、宛も無くウロウロ歩き廻わるなんて――おや、畜生、野良犬までが、迂散に思うかして吠え付きあがらあ」
往来は橋から左へ曲がるので、彼も道なりに左の方へよろめき乍ら歩いて行った。と又一つ橋がある。其橋を渡って少し行くと、洋館ばかりが立ち並んでいる寂しい寂しい街通へ出たが、もう此頃から彼の脚は彼の命令に従わなくなった。つまり歩けなくなったのである。
「脚まで俺を馬鹿にしてやがる!」