Classiques japonais avec furigana
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じんめんそうものがたり
人面瘡物語
田中 貢太郎
Lisez 人面瘡物語 (じんめんそうものがたり) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 5 114 caractères · 10 écrans
になるのを伺っておりました。御迷惑でも今夜は当方に御泊りなされて、主人の願いを御聞き届けくださいますように」
八郎は不安に思わぬでもなかったが、立派な武士の病人が今生の頼みと聞いては、往ってやらないわけにもゆかなかった。
「それでは、とにかくまいりましょう」
八郎は馬からおりて約束の賃銀を馬子に払い、かるさんの男に跟いて往った。
微暗い杉林の下を通って、十丁ばかり往ったかと思うと谷の窪地に出た。小さな流れが脚下を流れてそれに土橋が架っていた。橋のむこうに鼠色の巌が聳えていた。かるさんの男は其の土橋を渡って八郎を導いた。
草葺の家が巌の陰にあった。入口には枯枝の菱垣をしてあった。葉の赤くなった蔦葛がそれに絡まっていた。かるさんの男は其の門口から入って往った。
竹縁をつけた入口の処に二人の家臣が袴を穿いて坐っていた。
「旦那様が御待ち兼ねの御客様を、お供申してまいりました」
と、かるさんの男が八郎を顧みると、二人は恭しくおじぎをして、
「御苦労に存じます、どうぞ、ずっとお通りくださいますように」
八郎は草鞋の紐を解いて竹縁をあがった。かるさんの男はもういなかった。