Classiques japonais avec furigana
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あだうちさんたい
仇討三態
菊池 寛
Lisez 仇討三態 (あだうちさんたい) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 16 136 caractères · 33 écrans
いずこにても有付く方なく、是非なく出家いたしたのじゃ。ここで御身に巡り合うのは、天運の定まるところじゃ。僧形なれども子細はござらぬ。存分にお討ちなされい」
老僧の言葉は晴々しかった。
惟念は淋しい微笑を浮べた。
「討つ討たるるは在俗の折のことじゃ。互いに出家沙門の身になって、今更なんの意趣が残り申そうぞ。ただ御身に隔意なきようにと、かくは打ち明け申したのじゃ。敵を討つ所存は毛頭ござらぬわ」
老僧は折り返していった。
「いやいや、さようではござらぬぞ。ここは、御自分よくよく覚悟あるべきところじゃ。われらは、身上の有付きなきための、是非なき出家じゃ。御自分は違う。われらを討ち申されて帰参なさるれば、本領安堵は疑いないところじゃ。その上、我らを許して安居を続けられようとも、現在親の敵を眼前に置いては、所詮は悟道の妨げじゃ。妄執の源じゃ。心事の了畢などは思いも及ばぬことじゃ。在俗の折ならば、なかなか討たれ申すわれらではないが、かようの姿なれば、手向いは仕らぬ。早々、お討ちなされい!」
老僧の言葉は道理至極だ。惟念は、老僧を討とうという激しい誘惑を刹那に感じたが、それにもようやくにして打ち勝った。