Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

きずあとのはいけい

傷痕の背景

豊島 与志雄

Lisez 傷痕の背景 (きずあとのはいけい) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 19 022 caractères · 38 écrans

Aozora Bunko

「どうだい。」

「うむ……。」

漠然と答える時には、もう眼の笑いも顔の表情も消えて、掴みどころのない顔付になっていた。

「どっかで、いいだろう、一寸……。」

その先の、酒かお茶かを察しながら、にやりと彼は笑った。

「駄目だ、今日は……。」

「急ぐのか。」

「いや。……ないんだ。」

「少しなら、持ってるよ。」

「少し……。」そして眼が揶揄的に光った。「だが、腹が空いてるわけでもなし、喉が渇いてるわけでもなし……。」

酒を飲んでは止度のない彼だった。また、飲むことにさほど興味を持たない彼、相手の議論を聞くことにも興味を持たない彼だった。

「いやに、はっきりしてるね。……この頃、何かしてるのか。」

「何にも……。」

その、仕事の上に就ての彼の口癖の返辞だけで、友は満足して、それ以上は徒労だと見た。

「じゃあ、また……。」

「失敬……。」

赤みの多い顔に、蒼白い笑いを浮べて、杉本は、また、雑踏の中の孤独な漫歩を続けるのだった。光と色と音との錯雑した卑俗な渦巻きの中に、何を見るでもなく、何を聞くでもなく、背はさほど高くない肉附のいい身体を運んで、そして心には、周囲と全く別な、朗かな而も何かしら退屈なものを湛えて……。