Classiques japonais avec furigana
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ひかりとかぜとゆめ
光と風と夢
Lisez 光と風と夢 (ひかりとかぜとゆめ) de Nakajima Atsushi (中島 敦) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 79 032 caractères · 158 écrans
と感じていたらしいのだ――「ここはアピアだぞ。エディンバラではないぞ」という考であった。此の考が閃くと、一時はっと気が付きかけたが、暫くして再び意識が朦朧とし出した。ぼんやりした意識の中に妙な光景が浮び上って来た。往来で俄かに腹痛を催した私が、急いで傍にあった大きな建物の門をくぐって不浄場を借りようとすると、庭を掃いていた老人の門番が「何の用です?」と鋭く咎める。「いや、一寸、手洗場を。」「ああ、そんなら、よござんす。」と言って、うさん臭そうに、もう一度私の方を眺めてから再び箒を動かし始める。「いやな奴だな。何が、そんならよござんすだ。」…………それは確かに、もうずっと昔、何処かで――これはエディンバラではない。多分カリフォルニアの或る町で――実際に私の経験したことだが…………ハッと気がつく。私の倒れている鼻の先には、高い黒い塀が突立っている。夜更のアピアの街のこととて何処も彼処も真暗だが、此の高い塀は、其処から二十碼ばかり行くと切れていて、その向うには、どうやら薄黄色い光が流れているらしい。私はよろよろ立上り、それでも傍に落ちていたヘルメット帽を拾って、其の黴臭い・いやなにおいのする塀――過去の、おかしな場面を呼起したのは、此のにおいかも知れぬ――を伝って、光のさす方へ歩いて行った。