Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
Lisez 光り合ういのち (ひかりあういのち) de 倉田 百三 (くらたひゃくぞう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 439 caractères · 263 écrans
ただひとつ私の記憶に残っている、父の教訓的なポーズともいうべきものがある。
小学校の三年ごろ、私は教科書が手垢で汚れ、すりはげたので、新しい本にかえたくてたまらず、その本を雨あがりの道にわざと落して濡らして、持って帰ると父に言った。
「こんなに汚れたから、新しいの買って下さい」
父は本と私の顔を等分に見くらべていたが、
「そんなら私が洗い張りしてあげる」
と言った。私はあてがはずれたが、胸がドキリとしてねだる気になれなかった。
父は日本とじのその本をほぐし、一枚一枚板張りをして乾かし、にじんだ箇所には筆を入れ、表紙は堅紙(これも張物板に幾枚も張り重ねて父がつくったものだ)を当ててとじ直おし、「国語読本」という見出しも父が書いて、
「さあ、これでいいだろう」
と私に渡した。私はなさけない気がしたが、わざと落して汚したのが気がさすのと、そうまでして繕ってくれた本をいやとも言えず、仕方なくそれを学校へ持って行ったが、目立つので実に弱った。堅紙の表紙に父の「お家流」の見出しが敦厚な書体で書いてあるのが、見る毎に何かの咒文のように私の目に映った。
私がわざと本を落して汚したのが父に解ったのであろうか。