Classiques japonais avec furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lisez 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 160 664 caractères · 323 écrans
どうぞおはいりくださいまし」
云いすてて女ははいって行った。
何んとも云われない芳香が、切り戸口から匂ってきた。源介にとっては誘惑であった。彼はその匂いに引き入れられるように、ブラブラと内へはいって行った。
間もなく彼の叫び声がした。
「やあ綺麗な花園だなあ」
それから後は寂然となった。
そうして源介はその夜限り、この地上から消えてしまった。彼の姿は未来永劫、ふたたび人の眼に触れなかった。
「やあ綺麗な花園だなあ」
この彼の叫び声はいったいどういう意味なのであろう?
三
ここで再び物語は、鏡葉之助の身の上に返る。
ある日葉之助はいつものように、四国町の邸を出て、殿の下屋敷を警護するため、根岸の方へ歩いて行った。増上寺附近まで来た時であったが、「ヒーッ」という女の悲鳴がした。同時に山門の暗い蔭から、裾を乱した若い女が、彼の方へ走って来た。そうしてその後から二人の男が何か喚きながら走って来たが、葉之助の姿を見て取ると元来た方へ引っ返した。
「ははあ、さては狼藉者だな」
呟いたとたんに若い女は犇と葉之助へ縋り付いた。衣裳も髪も乱れてはいたが、薄月の光に隙かして見ると、並々ならぬ美しさをその女は持っていた。