Classiques japonais avec furigana
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とううん
凍雲
矢田 津世子
Lisez 凍雲 (とううん) de 矢田 津世子 (やだつせこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 121 caractères · 29 écrans
「駄目だってこと」
「でも、お高さんが好いていたら、どうするえ」
時二郎は黙った。
「やっぱりな」
親方は頷いた。
硝子戸が音を立てて開き、急に冷たい風が流れこんできた。黒が入って来た。そのあとから仙太がのっそりと入って来た。みんなはしんとして仙太の顔を見た。眼ばかりが大きく、異様に光ってみえた。
「今晩は、皆お揃いで」
そして、ちらと時二郎を見たが、気にもとめずに鏡の前に坐った。
「親方、髭あたってけれ」
親方はポンポン、と囲炉裏に火を落して、煙を鼻からふうっと吹いた。
「寒くなったしなあ」
明らかにうろたえていた。畳屋と他の二人は仕事が残っているからとて出て行った。指物屋は床屋の長男と将棋をさし出した。時二郎は新聞を見ていたが「おばこ節」を鼻唄で唄っていた。
「なんと、黒の大きくなったこと」
親方は剃刀を研ぎながら黒を見た。そして、湯をとりに奥へ入っていった。
仙太は据った眼付きで鏡をみていた。辺の何物にも気が届かぬふうである。
ひとわたり剃りが終った時、親方はまた剃刀を研いだ。
「親方、わしとこに、県下から買ってきた西洋剃刀あるけど、日本剃刀とどっちの方が好く切れるべがな」