Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ひみつ
刺青・秘密
谷崎 潤一郎
Lisez 刺青・秘密 (ひみつ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 935 caractères · 66 écrans
ほんとうに夜路は淋しかったろうに、感心な子だねえ」
そう云って、私をいたわって下さるのではないかしら。
街道の一と筋路は百姓家のあたりで少しく左の方へ折れ曲っているらしく、右側にあるその家の明りが、ちょうど松並木のつきあたりに見えている。家の表には四枚障子が締め切ってあって、障子の横の勝手口には、縄暖簾が下っているらしい。暖簾を洩れる台所の火影が街道の地面をぼんやりと照して、向う側の大木の松の根本にまで微かにとどいている。………もうその家の一間ばかり手前まで私はやって来た。暖簾の蔭の流し元で何かを洗っているらしい水の音が聞える。軒端の小窓からは細い煙がほのぼのと立ち昇って、茅葺の軒先に燕の巣のようにもくもくと固まっている。今時分何をしているのだろう。こんな遅い時刻に夕餉の支度をしているのだろうか。そう思ったとたんに、嗅ぎ馴れた味噌汁の匂がぷーんと私の鼻をおそって来た。それから魚を焼くらしいじくじくと脂の焦げる旨そうな匂がした。
「ああお母さんは大好きな秋刀魚を焼いているんだな。きっとそうに違いない」
私は急に腹が減って来た。早く彼処に行って、お母さんと一緒に秋刀魚と味噌汁で御膳を喰べたいと思った。