Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

こくこく

刻々

宮本 百合子

Lisez 刻々 (こくこく) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 401 caractères · 73 écrans

Aozora Bunko

ドアが開くと同時に白い萎んだ顔を入ってゆく自分に向け、歩くから、椅子にかけるまで眼もはなさず追って、しかし、椅子にかけている体は崩さず、

「……どうしたえ、百合ちゃん……本当にまァ……」

主任は、爪先で歩くようにして室の角にかけ、此方を見ている。署長は、大テーブルのあっち側で、両手をズボンのポケットに突こみ、廻転椅子の上に反っている。

「どうですね」

「ええ。……体はどうなの?」

自分は真直母親と口をききはじめた。こういう場面で母娘の対面は実に重荷であった。我々母親は十何年来別々に暮して来ているので、警察で会っても二つの生活の対立の感じは、消すことが出来ないのであった。

「どうやらこうやってはいるけれどもね」

まじまじ自分を眺め母親は、

「本当に、これじゃあどっちが余計苦労しているのか分らないようだよ、お前はいつ会っても平気そうに笑っているけれど……」

「だって、泣くわけもないもの」

自分は重く、声高く笑い、自分には興味のない犬だの、小さい妹の稽古だののことに話頭を転じる。母親がいらぬ心痛から妙な計画でも思いついては困ると、自分は留置場の内のことについては、何一つ云わないようにしているのであった。