Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

けしょうのもの

化生のもの

豊島 与志雄

Lisez 化生のもの (けしょうのもの) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 086 caractères · 27 écrans

Aozora Bunko

」

彼女が出て行き、一人になると、浅野は卓上に首を垂れて、両の掌に額をかかえた。戸外に虫の声がするだけの、深い静けさだった。

銀盆に、ジンフィールのコップ二つと、チーズの小皿。それを美枝子は浅野の前に押しやった。

「お礼のつもりよ。だって、あんな噂のこと、率直にわたしへ言って下すったのは、あなた一人だけですもの。」

浅野は顔を挙げた。

「奥さん、誤解しないで下さい。あんなこと、僕は全く信じてはいません。だから、ありのまま言えたんです。ただ、腹が立つだけです。僕は長い間、今でも、お宅にはたいへん世話になっています。そしてあなたの名誉を傷つけるようなことを聞くのが、悲しいんです。腹が立つんです。」

「それで、どうすれば宜しいんですの。」

やさしく頬笑んでる彼女の姿が、浅野には眩しく見えた。

「僕には何も分りません。あなたがたの社会のことは、何も分りません。あんな噂をたてたり、それを面白がって吹聴したり、御当人が笑って聞いていらしたり……僕には何もかも分らなくなりました。そして、悲しいんです。」

彼はジンフィールのコップを一息に飲み干した。

美枝子はちょっと宙に眼を据え、立ち上って二三歩あるき、マントルピースの上に、壺や花瓶の間に置き忘れられてる、今はもう用のない白檀の扇を取って、それを無心に眺めながら言った。