Classiques japonais avec furigana
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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし
十二神貝十郎手柄話
国枝 史郎
Lisez 十二神貝十郎手柄話 (オチフルイかいじゅうろうてがらばなし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 127 035 caractères · 254 écrans
「さよう。お前の親戚かな」
「とんでもねえ」と婆さんは撥ねた。「勿体もねえご旧家様でごわす」
「そのご旧家様、どこにあるかな?」
二
旧家であって財産家ではあったが、主人も主婦も死んでしまい、娘一人が生き残り、主人の弟の隼二郎という男が、後見人として入り込んでいる。上松の宿から三里あまり、山の方へはいった鷺ノ森という地点に、宏大な屋敷が立っている。――と云うのが茶店の老婆の話した、征矢野という家の輪廓であった。
(もうこれだけでも犯罪の起こる、立派な条件が具備されている)鷺ノ森の方へ歩きながら、貝十郎はそんなように思った。
(隼二郎という男が悪人で、征矢野という家を横領しようとする。後継者の娘が邪魔になる。悪漢に云いつけてお三保という娘を、傷者にするか誘拐させる。……平凡に考えてもこんなような、犯罪の筋道はちゃんと立つ)貝十郎は歩いて行った。
木曽の五木と称されている、杜松や羅漢柏や椹や落葉松や檜などが左右に茂っている。山腹の細道は歩きにくく、それに夕暮れでもあったので、気味悪くさえ思われた。空を仰いでも左右から差し出した木々の枝葉に蔽われて、夕焼けた細い空が帯のように覗かれて見えるばかりであった。