Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし

十二神貝十郎手柄話

国枝 史郎

Lisez 十二神貝十郎手柄話 (オチフルイかいじゅうろうてがらばなし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 127 035 caractères · 254 écrans

Aozora Bunko

「人を咒わば穴二つ、いい気味だ、態ア見ろ」

じっと穴の中を見込んだが、文目も知れぬ闇の底から冷たい風が吹いて来るばかり、老人の姿は見えなかった。

「なるほど巫女の云った通り、小気味の悪い悪人どもが到る所に蔓延っているわい」――油断は出来ぬと心を引き締め、松火の火を打ち振り打ち振り紋太夫は進んで行く。

奇数、偶数、奇数、偶数! ――幾百ないし幾千本、どれほど枝道が現われようと、彼は驚きはしなかった。奇数、偶数と行きさえすれば迷う心配がないからである。

今の時間にして十時間余り、道程にして十二、三里、紋太夫は歩いたものである。その時洞然と打ち開けた広い空地が現われた。それは空地と云うよりもむしろ一個の別天地であった。丘もあれば林もあり人家もあれば小川もある。蛍の光か月光か、蒼澄んだ仄かな微光が、茫然と別天地を照らしているが何んの光だか解らない。

どこからともなく人声がする。と歌声が聞こえて来た。その歌声を耳にすると紋太夫はアッと仰天した。日本の言葉で日本の歌を鮮かに歌っているからであった。

「おおここには日本人がいる! ここはいったいどこだろう?」

夢に夢見る心地と云うのはこの時の紋太夫の心持ちであろう。