Classiques japonais avec furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Lisez 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 81 668 caractères · 164 écrans
私は君に古城の附近をすこし紹介した。町家の方の話はまだ為なかった。仕立屋に誘われて商家の山荘を見に行った時のことを話そう。
君は地方にある小さい都会へ旅したことが有るだろう。そこで行き逢う人々の多くは
――近在から買物に来た男女だとか、旅人だとかで――案外町の人の少いのに気が着いたことが有るだろう。田舎の神経質はこんなところにも表れている。小諸がそうだ。裏町や、小路や、田圃側の細い道なぞを択んで、勝手を知った人々は多く往ったり来たりする。
私は仕立屋と一緒に、町家の軒を並べた本町の通を一瞥して、丁度そういう田圃側の道へ出た。裏側から小諸の町の一部を見ると、白壁づくりの建物が土壁のものに混って、堅く石垣の上に築かれている。中には高い三層の窓が城郭のように曇日に映じている。その建物の感じは、表側から見た暗い質素な暖簾と対照を成して土地の気質や殷富を表している。
麦秋だ。一年に二度ずつ黄色くなる野面が、私達の両側にあった。既に刈取られた麦畠も多かった。半道ばかり歩いて行く途中で、塩にした魚肉の薦包を提げた百姓とも一緒に成った。
仕立屋は百姓を顧みて、
「もうすっかり植付が済みましたかネ」