Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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はるかなたび

原民喜戦後全小説

原 民喜

Lisez 原民喜戦後全小説 (はるかなたび) de 原 民喜 (はらたみき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 60 577 caractères · 124 écrans

Aozora Bunko

が、悲しいかなしかも、どうしたことであろう、凡そ、今日世間一般が飢餓状態に陥ってしまったお蔭で、私も四六時中空腹に悩まされているのだが、どうかすると、私の眼はあの女の眼のようにキロリとたべものの方へ光り、私の溜息は食慾のために促され勝ちで、私の魂はあの女のように昏迷し、食っても食っても食い尽せないものを食いきろうとするように、悲憤の焔を腸に感じるのである。

☆私はその男に頼みごとがあって行くと、相手は大きな木の箱へ釘を打込んでいた。ワンピース(?)の作業服を着て戦闘帽を横ちょに被り、彼はもっぱら金槌の音に堪能しているらしい。私の言おうとすることなんか、まるで金槌の音で抹殺されるのだし、相手は社長さんでありながら、好んで人夫のようなことをしていながら、人足だ人足だ、今や日本は人足の時代だ、と云わんばかりの権幕で疎開荷造に余念なく、青く剃りあげた顎をくるりと廻して、こちらを睥んだりする。愈々私はとりつきかねるのだが、何だか忌々しく阿呆らしいので相手をじろじろ眺めてやると、向もこちらを忌々しげに睥み返し、用事がなければさっさと帰れ、と金槌の音を自棄につけ加えるのであった。