Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ふるいど
古井戸
豊島 与志雄
Lisez 古井戸 (ふるいど) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 21 433 caractères · 43 écrans
彼は室の中をぐるぐる歩き廻りながら、我を忘れかけることが多かった。
十
彼は騒ぎの夜以来、松木とは一言も言葉を交えなかった。顔を合せることさえ出来るだけ避けた。房子とも余り口を利かなかった。房子の方も変に黙っていた。
松木は昼間時々帰ってきては、やはり庭の井戸端で背中の汗を拭うことがあった。汗深いため残暑になやんでるらしかった。
そういう松木の姿を見ることが、彼には一番堪え難かった。見まいとしても、二階からすぐに見下せた。彼はわざと障子を閉め切って、反対の隅の方に寝そべった。それでも、車井戸の音ははっきり聞えてきた。
俺は何でこんなに焦燥してるんだ、と自ら尋ねかけても、はっきりした答は得られなかった。
松木が光子の父であることがいけないのか……大悪人でも善人でもなく、ただ小策ばかりの没感情的や凡人であることがいけないのか……いや、彼の存在そのものが彼には堪え難かった。
そういう憎しみはどこから来るか分らないものだった。口論をしたり殴合いをしたりした後の憎しみならば、まだどうとでもなるが、面と向っては口が利けない根本的の憎悪は、どうにも出来なかった。