Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ねむのきのかげ

合歓木の蔭

山本 周五郎

Lisez 合歓木の蔭 (ねむのきのかげ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 740 caractères · 27 écrans

Aozora Bunko

「来年になったら、この合歓木は」こう男が云った、「――私たちを夢のようにおぼろな花笠でおおってくれるでしょう……」

来年になったら。奈尾はふと眼をあげた、いまはまだ花期には早いのに、どうして今年咲かないことがわかるのだろう、そう思ったとき奈尾はああと口を押えた、眼に見えぬ手で躯を真二つに裂かれたような、非常な驚愕にうたれたのである。

――まさか、まさかそんなことが。

彼女は全身を耳にしてささやきの声を聞いた、舌のさきだけで語るごく低い、かすかな声である。生垣を隔ててからくも聞きわけられるだけだ、しかし心をとめて聞けば隠しようのない抑揚に気がつく、言葉の切り方にある癖もその人のものだ。奈尾は喪心したように合歓木の樹蔭をはなれた、ほとんど夢中で、よろめきよろめき家に帰った。

寝間の夜具の上に坐り、眼をつむって初めからのことを思い返した。――そうだ、椙原の家の庭で夜宴のあったとき、あの人は誰よりも遅れて、それもあんなに急いでかけつけて来た。あの人は奈尾をよく知っている、奈尾になにが必要だかということも……あの人は喜んで合歓木を植えてくれたではないか。同じ家に寝起きをしていて、五日めごとの庭の忍び会いを気づかないはずもない。