Classiques japonais avec furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Lisez 名人地獄 (めいじんじごく) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 149 286 caractères · 301 écrans
と記した文字も、躍り出しそうに元気がよい。
しばらく見ていた平八は、木戸を潜って内へはいった。
ギッシリ見物が詰まっていた。そうして幕が開いていた。上野山下池ノ端、美しい夜景が展開されていた。と、一人の人物が、鼓を打ちながら現われた。縦縞の結城紬、商人じみた風采であった。
「ははあこいつが鼓賊だな」
平八は口の中で呟いた。と、もう一人の人物が、それを追いながら走り出た。古ぼけた紋服、古ぼけた袴、年の頃は五十四、五、皺の寄った痩せた顔、郡上平八そっくりであった。
「ううん、さてはこいつだな、松五郎めがいいにくそうに、あくどいつくりだといったのは! いかにもこれはあくど過ぎる。だが、それにしても不思議だな。どうして俺と鼓賊とが、あの晩湯島と池ノ端とで、追いつ追われつしたことを、この役者達は知っているのだろう? これではまるでこの俺を、からかっているとしか思われない」
奥歯を噛みしめ、こぶしを握り、平八はブルブル身ぶるいをした。
と、その時、鼓の音が、一きわ高く打ち込まれた。
さすがの玻璃窓行きづまる
聞き覚えある鼓であった。忘れられようとしても忘れない、例の鼓の音であった。