Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Lisez 名人地獄 (めいじんじごく) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 149 286 caractères · 301 écrans
その足の先に月の光が、幽かに青く這い上っていた。かじかの啼く音が手近に聞こえ、稲葉を渡って来た香ばしい風が、莚戸の裾をゆるがせた。高原、七月、静かな夕、螢が草の間に光っていた。
「お前の様子が苦になって、思い切っておいらは行き兼るのだ」甚内は口説くようにいい出した。
「でもおいらは近々に行くよ。海がおいらを呼んでいるからな……おいらには山は不向きなのだ。どっちをむいても鼻を突きそうな、この追分はおれには向かねえ。小さい時からそうだった、海がおいらの情婦だった。おれは夢にさえ見たものだ。ああ今だって夢に見るよ。山の風より海の風だ。力一杯働いて見てえ! そうだよ帆綱を握ってな。……もう直きにお前ともおさらばだ。ああ、だが本当に気が揉めるなあ」
フラリと甚内は出て行った。
顔を上げて見ようともせず、なお甚三は黙然と、下俯向いて考えていたが、その時またも清涼とした鼓の音が聞こえて来た。
「ああいいなあ」といいながら、ムックリ顔を上げたかと思うと、体も一緒に立ち上がった。「唄い負かすか負かされるか、かなわぬまでも競って見よう。よし! そうだ!」と厩舎へ走り、グイとませぼうをひっ外すと、飼い馬を元気よくひき出した。