Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ぜんぞうをおもう
善蔵を思う
Lisez 善蔵を思う (ぜんぞうをおもう) de Dazai Osamu (太宰 治) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 041 caractères · 29 écrans
青森へ着いて、すぐに検事局へ行き、さまざま調べられて、帰宅の許可を得たのは夜半であった。裁判所の裏口から、一歩そとへ出ると、たちまち吹雪が百本の矢の如く両頬に飛来し、ぱっとマントの裾がめくれあがって私の全身は揉み苦茶にされ、かんかんに凍った無人の道路の上に、私は、自分の故郷にいま在りながらも孤独の旅芸人のような、マッチ売りの娘のような心細さで立ち竦み、これが故郷か、これが、あの故郷か、と煮えくり返る自問自答を試みたのである。深夜、人っ子ひとり通らぬ街路を、吹雪だけが轟々の音を立て白く渦巻き荒れ狂い、私は肩をすぼめ、からだを斜めにして停車場へ急いだ。青森駅前の屋台店で、支那そば一ぱい食べたきりで、そのまま私は上野行の汽車に乗り、ふるさとの誰とも逢わず、まっすぐに東京へ帰ってしまったのだ。十年間、ちらと、たった一度だけ見たふるさとは、私にこんなに、つらかった。いまは、何やら苦しみに呆け、めっきり弱くなっているので、「黄金の波、苹果の頬。」という甘い言葉に乗せられ、故郷へのむかしの憎悪も、まるで忘れて、つい、うかうか、出席、と書いてしまった。それが、理由の三つ。