Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しおばな
塩花
豊島 与志雄
Lisez 塩花 (しおばな) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 421 caractères · 25 écrans
彼はバルコニーの木の手摺によりかかって、ゆっくり話していたが、その時、一歩ふみだそうとして、足が重いのを感じた。それを無理にふみだすと、ねっとりした重さが伝わった。足先を返して、草履の裏を見れば、芋の一片が踏み潰されているのだった。
彼は無邪気に笑い、草履の裏から芋をはぎとって、庭に投げすて、手先をハンカチで拭きながら、また無邪気に笑った。
「罠にかかりましたよ。」
然し、彼女への反応はなかった。彼女は微笑すらしなかった。その顔は緊張して、殆んど透明と言えるほどに冴え返ったが、こんどは血の気が引いてしまったかのようであって、輝きを含んだ両の眼がじっと彼を見戌っていた。だがそれもまた瞬間で、彼女は額をそむけて、芋の方にかかった。
彼は狼狽した気持ちになり、眉をしかめて、手摺を指先で打ちたたき、それから煙草を吸った。彼女の仕事は終った。
「失礼致しました。」
はっきりした挨拶、だが、にっこり笑った。そして彼女はそこを去った。
その最後の笑顔に、山口はすがりついた。
山口が彼女と相対したのは、その時が最も長かった。其後は、波多野邸で数回顔を合せたきりで、ゆっくり話す隙はなかった。