Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lisez 夏の花・心願の国 (なつのはな) de 原 民喜 (はらたみき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 816 caractères · 310 écrans
やはり死者の気配はこの部屋に満ちているのだった。読経がおわって、近所の人たちが去ると、部屋はしーんと冴え静まっていた。彼は妻の枕許に近より、顔の白布をめくってみた。あれから何時間たったのだろう。顔に誌されている死の表情は、苦悶のはての静けさに戻っている。(いつかもう一度、このことについてお互に語りあえないのだろうか)だが、妻の顔は何ごとも応えなかった。義母が持って来たアルコールを脱脂綿に浸して、彼は妻の体を拭いて行った。義母はまだ看護のつづきのように、しみじみと死体に指を触れていた。それは彼にとって知りすぎている体だった。だが硬直した皮膚や筋肉に今はじめて見る陰翳があった。
その夜も明けて、次の朝がやって来た。棺に入れる花を買いに彼は友人と一緒に千葉の街へ出かけて行った。家を出てから、ずっと黙っていた友は、国道のアスファルトの路へ出ると、
「元気を出すんだな、挫けてはいかんよ」
と呟いた。
「うん、しかし……」と彼は応えた。しかし、と云ったまま、それからさきは言葉にはならなかった。佗しい単調な田舎街の眺めが眼の前にあった。(これからさき、これからさきは、悲しいことばかりがつづくだろう)ふと、そういう念想が眼の前を横切った。